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2026.05.20

【実例】スタートアップ3社のオフィス選定ストーリー|失敗と成功から学ぶ意思決定のポイント

「オフィスの選び方で、会社の成長スピードが変わる」

そう聞いても「大げさでは?」と感じる方もいるかもしれません。しかし実際には、オフィスにまつわる判断ミスが採用の失敗やコスト超過、社員のモチベーション低下につながったケースは少なくありません。

本記事では、スタートアップ3社のリアルな事例をもとに、創業期・成長期・拡大期それぞれのフェーズで「どんな判断を、どんな基準でするべきか」を具体的に解説します。成功談だけでなく、失敗談も包み隠さず紹介するので、ぜひ自社の状況と照らし合わせながら読んでみてください。

※本記事で紹介するケースは、実際の事例をもとにした参考情報です。最適な選択肢は企業規模・業種・働き方によって異なります。

なぜ今「オフィス選び」がスタートアップの成長を左右するのか

コストだけの問題ではない、オフィスが組織に与える影響

スタートアップにとってオフィスは「コストセンター」として語られがちです。しかし実際には、オフィスの環境は採用・定着・チームの結束力・ブランドイメージなど、事業の根幹に関わる要素と深く結びついています。

特に初期フェーズでは、オフィスが「チームとしての文化をつくる場」としての役割を担います。リモートでも業務は回るようになった今だからこそ、「わざわざ出社する理由」をオフィス自体が提供できるかどうかが問われています。

判断が難しい理由は「タイミング」にある

スタートアップがオフィス選びで悩む最大の理由は、「今の規模に合わせるべきか、将来を見越して選ぶべきか」というジレンマです。小さすぎれば半年後に手狭になり、大きすぎれば毎月の固定費が重くのしかかってくるでしょう。

事業計画と採用計画、そして働き方の方針この3つを整理してからオフィス選びをスタートすることが、後悔しない選定の第一歩になります。

【事例1】創業1年目・社員7名|シェアオフィスからの卒業タイミング

創業当初の判断:シェアオフィスでコストを抑える

都内でSaaS系プロダクトを開発するA社(創業1年目・社員7名)は、創業当初から都内のシェアオフィスを利用していました。月額費用を人数×個人プランで賄い、初期投資を最小限に抑えながらプロダクト開発に集中できる環境を選んだのです。

当初の判断は合理的でした。固定席を持たず、必要な時だけ会議室を予約するスタイルは、少人数のうちは十分機能します。初期コストをかけずに済む点は、資金が限られる創業期のスタートアップにとって大きなメリットといえます。

転機は「採用」だった

問題が表面化したのは、採用活動を本格化させたタイミングでした。候補者をオフィスに招く際、シェアオフィスの共用ラウンジでは「会社としての雰囲気」を伝えにくく、選考辞退が相次いだといいます。

また、チームが7名を超えたあたりから、シェアオフィスの空間では全員が集まれる場所を確保することが難しくなり、「チームとして働いている感覚」が薄れてきたという声も社内から上がってきました。

そこでA社は、月次の賃料負担を試算した上で、専有型のサービスオフィスへの移行を決断。初期投資を抑えながら、個室の専有スペースを確保することで、採用・チームビルディングの両面で課題を解決しました。

事例1の学び|初期コストを抑えつつ成長に備える方法

「卒業タイミング」を決める3つのサイン

A社の事例から見えてくるのは、シェアオフィスからの卒業サインは「人数」だけではないということです。以下の3つのサインが重なったら、移行を検討するタイミングといえるでしょう。

  • 採用活動が本格化してきた(候補者をオフィスに招く機会が増えた)
  • 定例ミーティングで全員が集まれなくなってきた
  • 「会社らしさ」を外部に見せたいシーンが増えてきた

逆にいえば、この3つが顕在化するまでは、シェアオフィスやコワーキングスペースで十分な場合も多いです。コストを抑えることは、スタートアップが次のフェーズに進む体力を温存することでもあります。

サービスオフィスを「踏み台」として使う発想

A社が移行先として選んだのは、保証金・内装工事費が不要で、月単位の契約変更が可能なサービスオフィスでした。「本格的な賃貸オフィスへの移行前の踏み台」として位置づけることで、将来の変更コストを最小化しながら、今必要な「専有空間」を手に入れることができたのです。

【事例2】創業3年目・社員30名|ハイブリッドワーク前提のオフィス設計

全員分の席を用意したら、コストが重くなった

コンサルティング事業を展開するB社(創業3年目・社員30名)は、事業の成長とともに都内の賃貸オフィスに移転。その際、将来の増員も見越して全員分の固定席+余剰スペースを確保した物件を契約しました。

当時はコロナ禍を経て出社率が不安定な状況でしたが、「いずれ全員が毎日出社するようになるだろう」という楽観的な見通しのもと、広めの物件を選んだといいます。

結果として、週の半分以上は席の3〜4割が空いたまま。月々の賃料に対して、実際に使われているスペースの割合が低く、「面積に対してコストが見合っていない」という状態が続きました。

フリーアドレス×ハイブリッドで設計し直した

この状況を受けてB社が取り組んだのが、オフィスのレイアウト全面見直しです。全員分の固定席をなくし、フリーアドレスを導入。同時出社率を実績値(約50〜60%)に基づいて試算し、必要な席数を絞り込みました。

さらに、個人の集中作業ブースや少人数のハドルスペース、Web会議専用の防音個室を新たに設置。「何をするためにオフィスに来るか」を起点にレイアウトを組み直したことで、出社した社員の満足度が上がり、チームのコミュニケーション密度も改善したといいます。

事例2の学び|出社率50%時代の面積計算と柔軟なレイアウト

面積の「適正値」は出社率から逆算する

B社の失敗から学べる最大のポイントは、面積の基準を「社員数の総数」ではなく「実際の最大同時出社人数」に置くべきだということです。

たとえば社員30名でも、出社率が60%なら同時出社は最大18名程度。フリーアドレスを前提にすれば、20席程度でも十分に運用できる計算になります。固定席前提で30席以上を確保するよりも、賃料を大幅に圧縮できるわけです。

「可変性」をレイアウトに組み込む

また、B社が移行後のオフィス設計で重視したのが「可変性」です。仕切り壁を固定しない、家具は移動可能なものを採用する、といった工夫により、組織変更や増員時にも工事費をかけずにレイアウトを変えられる設計にしました。

ハイブリッドワークが続く限り、出社率は変動しつづけます。作り込みすぎず、変えやすい設計にしておくことが、中期的なコスト管理においても賢い選択といえるでしょう。

【事例3】創業5年目・社員70名|事業拡大に伴う大規模移転

急成長が引き起こした「オフィス問題」

ITサービスを展開するC社(創業5年目・社員70名)は、シリーズBの資金調達後に急速な採用強化を実施。わずか1年で社員数が40名から70名超まで増加しました。既存のオフィスでは完全にキャパシティオーバーとなり、大規模移転が避けられない状況になりました。

ただし、この移転には大きな壁がありました。「次のオフィスをどのくらいの規模にするか」という判断が、経営陣の中でもなかなかまとまらなかったのです。事業が好調な分、「もっと採用を進めるかもしれない」という意見と、「採用ペースが落ち着く可能性もある」という慎重論がぶつかり合いました。

移転プロジェクトで最初につまずいたこと

C社が移転プロジェクトを進める中で最初に直面したのが、社内の合意形成の難しさでした。経営陣・人事・バックオフィスそれぞれが「理想のオフィス像」を持ち、意見がまとまらないまま時間だけが経過。その間にも候補物件は他社に抑えられ、選択肢が狭まっていきました。

また、移転に伴う原状回復費用や保証金、内装工事費の総額が当初の想定を大きく上回り、資金計画の修正を余儀なくされた点も誤算だったといいます。

移転時の初期費用や賃料の目安については、「東京都心のオフィス賃料相場2025年版|主要5区の坪単価と初期費用を徹底比較」でエリアごとの相場を確認できます。

内見で確認すべき項目については、以下の記事にまとめています。

事例3の学び|移転タイミングの見極めと社内合意形成

「何人になったら移転する」を事前に決めておく

C社の事例が示すのは、移転の判断を「困ってから」ではなく「あらかじめ基準を設定して」行う重要性です。たとえば「現オフィスの席稼働率が90%を超えたタイミングで移転活動を開始する」といったルールを前もって設けておけば、慌てた状態での意思決定を避けられます。

移転活動から入居までには、物件探し・契約交渉・内装工事・引っ越しと、一般的に3〜6ヶ月程度かかります。ギリギリの状況で動き始めると、交渉力が弱まり、条件の悪い物件を選ばざるを得なくなることもあります。

合意形成は「判断基準の共有」から始める

C社が移転プロジェクトを軌道に乗せるために取り組んだのが、「何を優先してオフィスを選ぶか」という基準を経営陣で明文化することでした。「採用競争力」「コスト」「将来の変更のしやすさ」といった複数の軸にそれぞれ優先順位をつけ、物件評価のフレームワークとして共有したことで、議論が進みやすくなったといいます。

意見がぶつかりがちな移転プロジェクトほど、「何を基準に決めるか」を先に合意しておくことが、スムーズな意思決定の土台になります。

3社に共通する成功のポイント

「今」だけでなく「1〜2年後」を見据えた選定

3社の事例を振り返ると、うまくいったケースに共通するのは「現状のフィット感」だけでなく、「1〜2年後の自社の姿」を想定した上でオフィスを選んでいるという点です。採用計画・事業の成長見込み・働き方の方針。

この3つを事前に整理してから物件探しに入ることが、後悔しない選定につながっています。

コストと柔軟性のバランスを意識する

また、「安く抑えること」だけでなく「将来変更しやすい状態を保つこと」を同時に意識している点も共通しています。長期契約で賃料を下げるよりも、短期・中期の契約で変化への対応余地を残しておく方が、トータルコストを低く抑えられるケースも多くあります。

契約形態の選び方については、こちらの記事も参考にしてみてください。

失敗から学ぶ|こんなオフィス選びは避けるべき

よくある失敗パターン3選

3社の事例と、よくある相談内容をもとに、特に注意したい失敗パターンを整理しました。

  1. 将来の増員を見越しすぎて広い物件を選ぶ
    増員予測が外れると、広すぎるスペースの賃料を払い続けることになります。成長フェーズにあるほど、「少し小さいくらい」でスタートし、拡張が必要になったら動くという発想の方がリスクを抑えられます。
  2. 内見なしで賃料と図面だけで決める
    図面上のスペックと実際の使い勝手は大きく異なることがあります。柱の位置、採光、エレベーターの台数、ネット回線の品質。こういった要素は実際に足を運ばないと分かりません。
  3. 「今のオフィスより良ければいい」という消極的な基準で選ぶ
    移転のたびに「とりあえず今より広ければ」という基準で選んでいると、根本的な課題が解決されないまま移転コストだけが積み上がっていきます。移転の目的を明確にし、「このオフィスで何を実現したいか」から逆算して選定基準を設けることが重要です。

内見で確認すべき項目については、以下の記事にまとめています。

あなたの会社のフェーズに合ったオフィス戦略とは

フェーズ別に見る、優先すべき判断軸

最後に、3社の事例を踏まえて、フェーズ別の判断軸を整理します。

フェーズ社員数の目安優先すべき判断軸
創業期~10名初期コストの最小化・契約の柔軟性
成長期10〜50名採用競争力・チームビルディング機能
拡大期50名〜合意形成プロセス・移転の計画性

どのフェーズにいても共通するのは、「今の状況だけで判断しない」こと。事業の成長に合わせてオフィスも変化させていく前提で、柔軟に選ぶ姿勢が大切です。

スタートアップのオフィス選びは「情報戦」でもある

オフィス選びは、エリアの相場感・物件の特性・契約条件の慣行など、知っているかどうかで有利不利が大きく変わる世界です。特に初めての移転や大規模移転では、専門家のサポートを活用しながら進めることで、交渉力と選択肢の幅が広がります。

オフィス選びのご相談は、& workplaceへ

創業期から拡大期まで、会社のフェーズや働き方に合ったオフィス条件の整理からお手伝いしています。「まず考え方を整理したい」「どのエリアが自社に合っているか分からない」という段階でも、お気軽にご相談ください。